―過去は静かな想い出―
碧は静かに一口、コーヒーを飲むと、「ふぅー」と小さなため息をついた。
「だろうな。あの梓さんだもんな。フェロモン出まくりだっただろ?」
わざとちょっと意地悪く微笑んでみせる。
「相変わらずキツイなぁ」
奈桜は苦笑いをしながら視線を外す。
「あれだけ好きだったからな。会えば離れられなくなるんじゃないかってマジで心配してた。今の奈桜には桜ちゃんがいる。状況があまりにも違う。……あの時、梓さんにあの映画の話がなかったら、お前、この世界辞めて一緒になるつもりだっただろ?」
碧はじっと奈桜を見る。
奈桜は下を向いてフッと笑った。
「碧はオレのストーカーか?………そうだな。あの時はそう思ってた。オレより梓の方が才能あったし、オレが辞めた方がスムーズに話が進みそうだったからな」
「スムーズに…か。オレらZの事はどうでも良かったってか?まっ、そうならなかったからいいけどな。あのタイミングで別れて正解だった」
碧はちょっとムッとしたように見えたが、すぐ元の落ち着いた表情に戻った。

