「雨宮さん、打ち合わせの前に取材が1本入ってますから」
彼女は奈桜のマネージャーの石田。
普段はサラサラのストレートな長い黒髪をシュシュでくくり、黒ぶちの眼鏡をかけている。
普通の男性なら、声をかけようとは思わないタイプだろう。
奈桜はウトウトとしながら…返事はしない。
「幼稚園児向けのファッション雑誌です。最近、『Z』は小さいお子さんにも人気がありますから。…ご存知ないと思いますが…『コロン』と言う雑誌です」
「コロン?」
思わず奈桜の目がパチッと開く。
「あの雑誌、当日じゃないと手に入んないんだよなぁ」
信号待ちで止まった窓の外を見ながらついボヤいてしまった。
「えっ!?」
「えっ?」
奈桜と石田はバックミラー越しに見つめ合う。
「いや、こ、この間、友達に頼まれたんだよ」
変な汗が額に浮かぶ。
「友達に?ですか?」
「友達…の子供用」
奈桜は首を傾けて寝たフリをした。

