「桜ちゃん、おはよう」
「優子さん!!いらっしゃい!」
桜は鍵を開けて入って来た、さっきの女性に飛びついた。
優子さんと呼ばれたその女性―
奈桜の母で、桜の祖母。
まだまだ若いので『おばあちゃん』とは呼ばさず『優子さん』と呼ばせている。
「何か食べた?ホットケーキ、作ろうか?」
優しく桜の頬を両手で包む。
「うん!優子さんのホットケーキ、好き!」
桜は嬉しそうに優子の手を引いてキッチンに連れて行く。
「後で一緒にクッキーも作ろうね。材料持って来たのよ。ほら!」
桜に材料の入った紙袋を覗かせる。
「あっ、桜の花びらだ」
桜が中に入っていた桜の花びらを取り出した。
「ほんとだ。どこで入ったんだろ?」
「パパ、桜も見に行こうって言ってたのに…」
淋しそうに呟く姿が切ない。

