着替えを済ませて奈桜はマンションの1階まで降りて来た。
いつもの黒い高級車が止まっている。
サングラス越しにチラッと周りを確認する。
遠巻きに若い女の子達がこっちを見て騒ぎ始めた。
奈桜は軽く手を振って車に乗り込む。
「奈桜ーーー!!」
あちこちで黄色い声が上がる。
でも、ここまで。
奈桜のファンは決して追い掛けないし、近寄る事はしない。
奈桜に迷惑をかけない事をモットーとしているらしいのだ。
おかげで近頃は奈桜も彼女達に手を振るようになった。
「見た?チョ~カッコイイ!!」
「顔、ちっちゃ~い」
「私、奈桜と目が合った!!」
「チョ~カッコイイ!!私、絶対、奈桜と結婚する!!」
「絶対、彼女とかいて欲しくないよね」
テンションの上がった女の子達の横を1人の40代後半の女性が通り過ぎて行く。

