「…もしもし」 「もしもし…」 静かな落ち着いた女性のその声に、奈桜の心臓はドクンと大きく鳴った。 次の言葉が出て来ない。 「奈桜?」 「…うん」 まだ耳に残っていた、その声… 「水無瀬(みなせ)です」 やっぱり… 奈桜の心がざわざわと波立って行く。 聞きたくて…聞きたくて… でも2度と聞いてはいけない声だった。 「……うん」 驚きと嬉しさと戸惑いと… 封印していた記憶があっさりと蘇る。 情けない程に。