パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

「ほんと、めでたいヤツだよな。そのポジティブさをいつまでも持ってろよな」


碧はやれやれという感じで奈桜の肩に手を置く。
そして顔をかなり近付けて小声で言った。


「今日は雑誌の記者も来てる。お前と桜ちゃんに興味を持ちだしたヤツも出て来た。早く戻れ。この話はここで終わらせた方がいい。桜ちゃんの事は任せろ。ちゃんとおばさんに渡すから」


そういうと桜の背の高さに合わせて屈み、優しく微笑む。


「桜ちゃん、こんにちは。久しぶり。僕の事、覚えてくれてるかな?」


「覚えてる。…碧くん」


知った顔を見て、ちょっとだけ表情の固さが取れた。


「よし。いい子だ。パパはまだお仕事があるから、僕とおばあちゃんを待ってようか~」


碧の普段は人一倍強い目力も、小さな桜相手に思いっ切り崩れて、ただの『お兄ちゃん』になっていた。
碧は奈桜を見上げると早く行くように促す。
奈桜は申し訳なさそうに頷くと現場へと走った。


嘘は……


生きて行く上に必要な嘘は『アリ』


走りながら小さく頷いた。