パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

「ごめんな。急に打ち合わせが入った。水族館はまた今度な」


奈桜は女の子の目の高さまでかがむと頭を撫でた。


「優子さんに来てもらうからいい。……パパ、パンツはいて」


一瞬、淋しい表情を見せたが、女の子はうつむいて自分の部屋に走って行った。


「桜!(さくら)」


追いかけはしない。出来ない。
次の約束が、確実な約束が出来る訳ではない。
深いため息をつくと、壁に貼ってある1枚の絵を見つめた。


奈桜の1人娘、桜が描いたママと桜の絵。


「ごめん…な」


桜が落として行ったパンツを虚しく拾う。
落とされたパンツを拾って穿く程、淋しいものはない。


「パパは………裸族だ」