パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

通りに出ると奈桜は桜をそっと下ろした。


「怖かっただろ?ごめんな。もう大丈夫だからな」


優しく頭を撫でて、桜の頬に自分の頬を合わせる。
知らない大人達にいきなり囲まれ、名前や住所を問われた不安な気持ちが、まだオドオドしている目に表れていた。


奈桜はもう一度、桜を抱きしめる。
必死にこらえて泣かない事が余計に辛い。
まさかこんな目にあわすなんて。


桜は…
何となく泣いてはいけないような気がしていた。
奈桜の悲しい目に、何かを感じていたのかもしれない。


「桜…、優子さんは?何で1人でいたんだ?」


奈桜は優子が近くにいないかキョロキョロと辺りを見る。


「いないよ。美奈子ちゃんと遊ぶから先に帰ってもらったの。でもね、美奈子ちゃん、ママがお出かけするから遊べないって」


奈桜は一生懸命話す桜の顔を愛おしそうに見つめる。
外で…
こんな太陽の下で桜を見るのは何ヶ月ぶりだろう。
少し茶色がかった髪は七海に似たのか?
ふと、一瞬、七海が浮かんだ。
さっきのみんなの話のせいかもしれない。