パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

「なんだよ。それ」


奈桜がちょっとムッとした顔を見せる。
ゆっくり体を離しながら梓はにっこりと微笑んだ。


「褒めてるのよ」


「子供扱いして」


奈桜のすねたような顔に梓は穏やかな表情を見せる。
このまま…、このままこうしていられるのなら。
いつだって、誰だって、同じ事を思う。
なのに。


「行かなきゃ」


「おぅ」


奈桜はわざと平静を装ってみせる。
もう時間だという事は二人共分かっているコト。
これ以上は気持ちを抑えなければならない。


「気をつけて…な」


「ありがとう。奈桜も」


ゆっくり後ろを向いて歩き出す。
何度も何度も名残惜しそうに振り返りながら。
そして。
最後に振り返った時、梓が全速力で奈桜めがけて走って来た。
力任せに抱きつくと大きな目で強く奈桜を見て、優しくくちびるを重ねた。
奈桜は驚きながらも梓を強く抱きしめる。