パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

何も言わずただ抱きしめ合うだけでいい。
この簡単な動作がしたくても出来なかった。
こんな簡単な事が、心を通い合わせないと出来ない。


人間は複雑で複雑で、結局は単純な生き物なんだろう。
言葉にすれば通じるのに、なかなかそこに色んな感情が絡まり合って上手く行かない。
だから…『人間』は面白いのかもしれないが。


「帰って来いよ。すぐに呼び戻してやるから」


低く、心に染み込むような奈桜の声。
きっと梓にしか聞こえていない。
梓は『うん』と頷く。


お互いの鼓動が聞こえそうな程大きな音で打ち続ける。


「奈桜…、」


「ん?」


「大人になったね」


「え?」


梓が奈桜の胸でクスッと笑った。