パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

「梓ーーー!」


空港中に響き渡るような声で奈桜が叫ぶ。
一斉に辺りが静かになった。
皆の視線は奈桜と梓に注がれる。
『痛いくらいに…』とはこういう事を言うのだろう。
形のない『視線』というものが鋭い刃(やいば)のような錯覚に落ちた。


『ドクン!』と1回、奈桜と梓の心臓が大きく打つ。
奈桜は必死の形相で梓の後ろ姿を見つめる。
梓は…
靴音とともに揺れていた髪がピタッと止まった。


「絶対、帰って来い!」


梓の口元が少しずつ震え始める。