パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

しばらく2人は見つめ合った。
行き交う人たちは皆、ドラマか映画の撮影だと信じて疑わない。
ここまで堂々とされれば、そうも思えるのだろう。
何故かわざとらしいくらいに二人を見ようとはしない。
でももちろん、奈桜と梓にはそんな事はどうでも良かった。
バレていようがいまいが、二人は二人の世界にいた。
紛れもなく、それは愛し合う恋人たち。


「待つと言ったら?」


奈桜の優しい面差しが、男らしい強い顔に変わった。
期待していたはずなのに、梓は驚いた顔で奈桜を見る。


「あ…、もう行かなくちゃ」


急に慌てて立ち上がり、話を切る。
これ以上聞いてはいけないし、求めた自分が欲深いとさえ思った。


「じゃあね。奈桜」


奈桜に言葉を挟むスキを与えず後ろを向いてさっさと歩き出す。