パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

ちょっと早足の梓の靴音が、ワンテンポ遅れて止まる。
数秒間そのままで、ふいにちょっと顔を上げるとゆっくりと振り返った。
大勢の人が行き交う中、真っ直ぐ梓を見つめ立っている奈桜。
歩く人達の中、立ち止まっている姿は目立った。


「奈桜……」


憂いをおびた梓の目が大きく見開く。


「どうしたの?」


予想外の事が起きた驚きの表情で聞く。
何が起きたのか簡単には理解出来ない。


「どうしたじゃないだろ?」


奈桜はゆっくり距離を縮めて行く。


「何で勝手に帰るんだよ」


「勝手にって…。言わなきゃいけなかったの?」


梓は優しく微笑みながら笑った。