「いいとこに住んでるね。さすが、トップアイドルだわ」
部屋をグルリと眺めて感心したように言う。
「『トップアイドル』って言葉にトゲがある」
深い褐色のコーヒーをカップに移しながら奈桜が笑った。
「誉めてんのよ。純粋に。こんな部屋、ひと握りの人間しか住めないわよ。…ううん。もっと少ないかもしれない。選ばれた人間なのよ。奈桜は」
「全然そんなんじゃないよ。この家はある意味、自分を追い込んで奮起させる手段。オレって、『現状維持』が好きな方だろ?上を目指す為にわざとめちゃくちゃ高い目標を置いてみたんだ。もう頑張るしかない!働くしかない!ってコト。まぁ、自分の稼ぎをカタチにしたいってのもあったけどね。男だし。…ここは景色もいいし、セキュリティもしっかりしてるし、買って正解だった」
かなり照れ臭そうに笑いながら静かにコーヒーカップを七海の前に置く。
甘く芳醇な香りが、まず七海の嗅覚を満足させ、甘くすっきりした味に喉がうなる。

