パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

風が連れて来るのか、葉の青い匂いに混じって花のほのかな甘い香りがする。


「昔さ、よく来たよね?」


泉が懐かしそうに言う。


「夜中に2人でギター弾きながら大声で歌ってさ」


奈桜の視線も昔を見ていた。


「通報されてお巡りに追いかけられたよな?」


「奈桜、あの時めちゃくちゃ早かったよ。オレのギターまで持ってくれてさぁ。両手にギターケース持って、オレより早いってどんだけ足早いんだよ?」


泉はクスクスと笑う。


「必死だったんだよ」



あの頃―
いつデビュー出来るかも分からず、2人で密かに曲を作ってどこかのオーディションに出ようと思っていた。


出来る訳ないのに。
あの頃は真剣にそう考えていた。


「オレ達さ、」


「ん?」


奈桜が泉の横顔を見る。