「奈桜…」
じっと前を見据えたまま席に座っている奈桜に泉が近付いて行く。
声をかけるのもはばかられるような研ぎ澄まされた空気が奈桜を包んでいる。
「デカイな」
「!?」
泉の声に驚き奈桜が振り返る。
「ごめん!驚かした」
「何だよ。珍しいな」
一瞬、驚いたもののすぐにフッと笑った。
泉はひとつ席を開けて座ると、辺りをゆっくり見渡した。
すでにスタッフが走り回っている。
巨大なセットはここが球場であるという事を微塵も感じさせず、華やかな色とりどりのライトは完全に異空間を造り上げていた。
「すごい…な」
奈桜が静かに呟く。

