「大体、自叙伝出版って何だよ。ついこの間帰って来たばっかだろ?一体、いつ書いたんだよ?」


碧は悔しそうにドカッと椅子に座り、右手で拳を作って膝を叩いた。


「それがこの世界だよ。本なんて出す気になればいくらでも作ってくれるヤツがいる。金が動けば人も動くさ。七海のテキト~な自叙伝くらい、一日で十分だろ」


泉の言葉にみんな納得するしかない。


「問題はこの『父親も判明!』だよな」


心の低い呟きにそれぞれ深く頷く。


「わざと今日にぶつけて来たのかもな」


「わざと?」


『やられた』という表情をみんなが一斉に浮かべた。
Zのコンサートは今日からドームで4日間。
奈桜はドームに必ずいる。
マスコミから逃れる事も出来ず、騒ぎはどんどん大きくなる。
こうなれば、ファンの子たちも静かに見守る訳には行かないだろう。
せっかくの大切なコンサートは台無しになってしまうだろう。


コンサートはZにとってファンと生で触れ合える大切な空間。
みんなのあの笑顔とパワーを感じる事が自分たちの力となる。
忙しさに押し潰されそうな毎日も、寝る時間がほとんどない日が続いても、1年1度のこのコンサートを楽しみに頑張っているのに…