本当なら…
自分と付き合う前の事とは言え、許せない気持ちに苦しむだろう。
付き合っていた人に隠し子がいた。
でも、ショックだった気持ちも今は癒えている。
それは奈桜も知らなかった事だし、今、きちんと責任を取っている。
子供の母親とも完全に切れて、結婚歴もない。
騙されていた訳ではなかった。


「頑張ってたのね」


奈桜がパパをやっている姿を想像して、笑った。
あの忙しいスケジュールで子供を育てていた事を、今は尊敬さえしている。


「私に出来る事はこれくらいよ。奈桜…」


綺麗な満月が夜を照らす。
妖しい輝きをじっと見ていると、思わず叫びたくなるのはどうしてだろう。
無性に人恋しくなる。


「奈桜…」


金色に輝く満月がユラユラと揺れた。