固かった神川の顔に笑みが溢れる。


「ほんとにいいの?ほんとに専属契約させてくれるなら、奈桜は自由にしてやる。アイドルとハリウッド女優。そりゃ、ハリウッドを取るでしょ?アイドルは所詮、寿命が短い。女優は…死ぬまで女優だからね」


勝ち誇ったように神川が笑う。


「では、そういう事で。よろしいですね?」


顔にかかった髪をかき上げた手でネックレスをまた握った。


「いいよ。異存ナシ。事務所の方、よろしく頼むよ。キャンセルはナシだから」


梓は立ち上がると一礼して部屋を出ようとした。


「あ…、ひとつ聞いてもいい?」


梓の背中に刺さる神川の声。


「はい」


後ろを向いたまま答える。


「奈桜は…特別な存在?」


梓の体がビクッと動いた。
また左手がネックレスを触る。


「ただの……お友達です」


振り向いて微笑み、部屋を出て行く。


「イイ女になったな…」


颯爽と歩いて行く靴音を聞きながら小さく呟いた。