パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~


「どうぞ」


いつの間に連絡したのか女性社員がコーヒーを持って来てくれた。


「ありがとうございます」


芳醇な香りが気持ちを少し落ち着かせる。


「早速だけど、話は大体聞いてるよね?再来年のドラマに是非、主役で出て欲しい。昔のオトコとよりが戻る平凡な家庭の幸せだった主婦。清潔感があって、同性からの支持が高い梓ちゃんにしか出来ない役。もう、絶対やって欲しい!」


梓の正面に座った神川は、前のめりになりながら強く梓の目を見つめる。
梓はゆっくりとコーヒーカップを置いた。


「相手役も考えてある。まだここだけの話だが、Zの雨宮奈桜だ」


梓の表情が一瞬曇った。
『奈桜は完全にこの男の思うままに使われる…』


「どうだ?まっ、ハリウッド女優の梓ちゃんからしたら、Zの雨宮奈桜なんて子供過ぎて面白くないだろうけど。今、人気あるんだよ。アイツら。あと10年はアイツらの時代だ。再来年なら奈桜の力も借りて視聴率はもっと取れる。梓ちゃんの顔を潰す事もない相手だよ」


奈桜は視聴率の道具にしか見られていない。
梓の鼓動が怒りで早くなる。