パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~


静まり返った空間にドアを開ける音が響く。
奈桜は先にみんなを中へ入れた。


「スリッパ、そこにあるから」


「えぇー、普通そういうのって出してくれるんじゃないの?」


心が不満げに言いながらスリッパ立てからみんなに配る。
奈桜はその様子をじっと見ていた。
スリッパの柄は全て桜の好きなキティちゃん。
しかも桜の小さなスリッパまである。


奈桜はわざと全てをそのままにしていた。
あえて話を切り出さなくても、どこで気付かれても、いつ何を言われても、その時点で桜の話に持って行こうと思っていた。
みんなが家に入った時点で、いつでも言う準備は出来ている。
奈桜はグループ1のツッコミの心の反応に神経を尖らせた。


「あっ!」


「何!?」


心の驚く声に過剰に反応する。早く言ってしまいたい…でも、反応が怖くてまだ気付いて欲しくない…
矛盾した想いがグルグルと奈桜の心の中で回る。


「数、足りないよ。あ…、泉、このちっちゃいヤツ履いとけよ」


心は泉に桜の小さなスリッパを渡す。


「なんでやねん!」


不自然なイントネーションの大阪弁で泉が突っ込み、そのまま肩を組んでリビングへと入って行く。


「なんでやねん…って。お前らの方が『なんでやねん』…だろ」