「いや、オレひとりで抱えきれる秘密じゃなかったよ。仕事の面でも細かいとこで碧がフォローしてくれて助かってたし」


「お前がそう思ってるだけで、オレにしたらたまたまそうなってただけだよ。そんな大層なことしてない」


お互いに何か暖かいものを心に感じていた。
奈桜は、碧に家族でもないのに強く支えてもらった心強さがあった。


「みんなに言う前に、碧にちゃんと礼が言いたくてさ。まぁ…それだけだよ」


奈桜が照れ笑いしているのが碧にも分かった。


「奈桜、とうとうこの時が来たな。どうなるか全く分からないけどさ、きちんと話すしかないよ。大丈夫。なるようになるって」


碧には励ます事しか出来ない。


「ありがとう。悪かったな。休んでるとこ。後で泉から連絡あると思う。じゃあ…明日。おやすみ」


気持ちの…8割は通じたかな?と奈桜は思った。
後の2割は口下手なせいで分かってもらえたかどうか分からない。


奈桜はぼんやり部屋を眺めた。
今の自分には広すぎる空間。
でも、そこらじゅうに娘の桜の存在を感じる。
明日…この空間はZのメンバーの複雑な想いに満たされるだろう。
奈桜はしっかりと腹をくくった。