パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

「でも、声かけてあげるのは今だけよ。このチャンス逃したら後悔するわよ」


何故か必死に訴えて来る。


「お前、何が言いたい?」


グラウンドをじっと見つめながら、奈桜は呆れた。
有名な演出家と結婚したのならもっと騒がれているはずだろう。
何も話題にならないのは、おそらく無名の演出家。
七海はダンナの仕事が欲しいに違いない。
奈桜はすぐにそう読んだ。


「何よ。人が親切で声かけてやってるんじゃない」


七海はそっぽを向いた。
奈桜は深いため息をつく。


「お前さ、まだオレに桜の事、聞いてないぞ。母親なら、まず、子供の事を聞くんじゃないのか?」


さっきからずっと引っ掛かっていた事。
いつ七海の口から桜の話が出るか待っていた。


「なんだ。そんな事?」


あっけらかんと答える。


「そんな…事?」


奈桜は驚いて七海の方を見た。