静まり返った真夜中の住宅街を抜け、奈桜は広いグラウンドの側に車を止めた。
全ての動きが止まった深夜のその場所は街灯だけがひっそりと灯り、遠く近く…鳴く虫の声が耳に心地良い。
何となく違う風を感じるのは『気持ち』の問題だろう。
暑さよりも心地良さが先に来る。
奈桜は頭上に広がる濃紺の夜空を見上げて深呼吸した。
「大丈夫。上手く行く」
自分に言い聞かせると、ゆっくりと踏み締めるようにグラウンドを歩いて行く。
そしてグラウンドの中央の近くで止まった。
長いストレートの黒髪。
スレンダーな体つき。
肩幅ほどに足を開いて腕を組んで立つ姿。
そう。
いつだって、後ろ姿で待っている。
こちらを向いていた事がなかった。
「待ったわよ」
後ろを向いたまま、七海が言った。

