「はい…」
しばらく呼び出し音が鳴り、この電話で起きただろう、眠い、けだるい女の声がした。
「もしもし、あの…、雨宮 奈桜です。こんな時間にごめん」
電話の向こうの声がクスッと笑った。
「奈桜?待ってたわよ。きっと、こういう時間にかけてくるって思ってた」
言いながら、起き上がった体勢をとった事が漏れて来る音で分かる。
「元気そうだな」
「フフ…、お蔭さまでね。実物見たら驚くわよ。あの頃より、ずっとイイ女になってるから」
「あぁ。桜の母親だからな。綺麗には違いないだろうな」
電話の相手は桜の母親、七海(ななみ)だった。
相変わらずの生意気な喋り方に、奈桜はちょっと安心した。

