広い稽古場―
聞こえて来るのは奈桜のソロ曲と、たまに漏れるかすれた息遣い。
切れ間なく踊る奈桜は、まるで何かにとりつかれたような恐ささえ感じる。
今は…ただ踊っていたいと奈桜は思っていた。
じっとしていれば嫌でも何かを考えてしまう。
考える事を止められないのなら、体を動かしてその事に夢中になりたかった。
考えれば考える程苦しくなるこの状況を何とか好転させたくて、少しでも前を向きたくて踊る事で気持ちを高めようとしていた。
汗がこめかみから流れ落ち、ターンの度に空に散る。
アイドルらしい華奢な細身の体だが、程よくついた筋肉は意外と逞しさを感じる。
メンバー1の歌唱力とキレのある踊りがひとつの曲を完成させて行く。
ドアの外にいた碧も音が止まるまでは中に入る事を許されないような気がして、立ち尽くしていた。

