パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~

「何で来たんだよ!!やっと取れた休みだろ!?」


「仕方ないだろ。仕事なんだから」


奈桜は目を合わさず辛そうに床を見る。
仕事なんだから…。
奈桜だって、今日の休みをどれだけ楽しみにしていたか。



碧は唯一、グループで奈桜の秘密を知っている人物。
グループで、というより、奈桜の家族以外で知っているのは唯一、碧だけだ。
奈桜に子供がいる事は事務所すら知らない。


『絶対バレてはイケナイ。トップシークレット』


「打ち合わせなんて、どうにでもなるだろ。オレら5人もいるんだぜ。お前1人くらい来なくったって何ともない!」


それは碧流の優しさだった。


「ありがとう。気を遣わせて悪かったな」


奈桜は優しく微笑むと碧の肩を叩いて部屋に戻って行く。


「バカヤロウ。せっかくオレが休み取れるようにしてやったのに。クソッ!!」


碧は床を思い切り蹴った。
碧も徹夜だった。


もう…いつから休んでいないんだろう。
稼げるうちに稼がす事務所。
人気商売だから仕方ないとはいえ、奈桜にだけは休みを取らせてあげたかった。


パパとのお出かけを楽しみにしている桜の為に。


「辛いのは奈桜だよな…」


ため息をついて小さく呟いた。