憂いの塔



「さっきも入ってきんだよ」

紗江子は不思議そうに宙を眺める。


「何言ってんだい。
庭から一旦出て、もう一度入ってきたのかもしれないじゃない。」



「そうなのかな……。だけど霧生さんの顔、違うんだよね」


紗江子がボソッと言った。


首を掻く、自信が無いときの癖だ。



「えっ?」


何だって?と言うように淳子は耳を突き出す。


「なんか最初に入ってきた時の表情とさっきの表情が全然違うっていうか……。
オーラが違うっていうか……。」


紗江子はうーんと唸りながら腕を組んだ。



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