---from 龍之介--- 今、 自分の隣には雨霧がいる。 長い黒髪が風に揺れて時々俺の腕に当たる。 近くにいるんだ。 俺は改めて確信して そしてまたそれを不思議に思う。 ふとさっきの彼女の言葉を思い出す。 「先生、 もしもう帰るんだったら一緒に駅まで帰りませんか?」 どうして彼女はあんなこと言ったのだろう。 俺のことを避けているはずなのに。