「あ、いや、なんでもないよ」 「そうですか? それじゃ失礼します」 そう言って彼は背を向けてドアを開けた。 その仕草に少しほっとする。 早く離れて行って欲しい。 「あ、そうそう、先生?」 再び呼ばれて俺は顔を上げる。 「今度、 相談にのってほしいことがあるんでお願いします」 振り向きながら言う彼の表情が日差しに背を向けているせいかはっきりと読み取れない。 多分、 進路か何かの相談だろう。