ハーフなのだろうか、茶色い髪に透き通るように白い肌、端正な目鼻立ちをしている。驚くほど美少女だった。

 心臓の鼓動が、彼女に聞こえてしまうのではないかと思うほど、高鳴る鼓動。俺は急いで顔を引っ込め、完全に木の影に隠れた。右手を胸に当て、必死で落ち着こうと努める。

 幸い気付かれることはなく、彼女は通りすぎていった。


 俺は一人になったことが分かると力が抜け、木にもたれながら目を閉じた。さっきの女の子の顔ばかりが頭に浮かび、心臓の鼓動が速まる。

 こんなこと初めてだった。俺は一体どうしたって云うんだろう。クラスの女の子を見ても、唯一の女友達である美久を見ても、こんな感情になったことはないのに。

 それは俺にとって初めての恋、初めての一目惚れだったのだろう。

 のちに恋人となる結麻に、このことは話してはいない。何となく照れくさくて云えなかったんだ。