いつの間にか、夕日が海を紅く染めている。後少しで暗闇に変わるだろう。結麻と過ごしたあの夜のように。

 俺は随分と長い時間、結麻との思い出を語っていたものだ。

 ふと横を見ると、そばかすの女性はポロポロと涙を流している。


「同情して泣いてくれてるの?」

 俺がそう訊くと、女性はかぶりを振った。


「ねぇ、名前和哉さんでいいんだよね?」


「あ、あぁ。自己紹介もしてなかったな。俺は和哉。君は?」


「私はサキ。和哉さんに同情したわけじゃないの。私も同じように過去を彷徨っていたから」


 やはりサキも……。そう思っていると、サキは俺の想像とは少し違うことを云った。


「無理に忘れようとしなくてもいいじゃない。だって和哉さんは、結麻さんに会おうと思えば会えるわ。そして彼女の旦那さんから奪うことだって出来る」


 結構過激なことを云うんだなぁと、サキの真剣な表情にそう思っていると、話しの続きがあるようだった。