――それから数ヵ月後、俺は結麻にカフェでバイトしていることをカラオケの帰り際に伝えたのだけれど、どうやら覚えていてくれたようで、俺に会いに来てくれた。

 勤務中だったため、会話らしい会話は出来なかったけれど、結麻の顔を見れた俺は幸せな気持ちだった。でも結麻が店を出る時、もしかしたらもう二度と会えないのではないか、そんな気がした。けれども追いかける勇気もなく、ただ結麻の後ろ姿が見えなくなるまで目を逸らせなかった。

 あの時、追いかけて抱きしめていたら結麻はどう思っただろうか。そんな勇気もなく、何年もあっという間に月日が流れた。

 俺に残ったのは、結麻との幸せな思い出と、たくさんの後悔だけ。全てを伝えるのがいつだって怖かったんだ。今も結麻との記憶の中で俺は生きている。