結麻と別れた後、俺はその帰り道の途中、隼人に電話をした。ライバルなのだから、俺が結麻と付き合うことになったときちんと伝えよう。もしかしたら殴られるかもしれない。それでも隼人には真っ先に伝えるべきだと思う。

 隼人はすぐに俺の家へ飛んできた。


「電話で云ってたこと、本当か?」


 俺と会うなり、すぐさま隼人はそう問うた。
 俺は隼人の目を真っ直ぐ見据えて頷くと、隼人は笑い声を漏らす。


「やっぱりな。俺はお前が結麻を射止めるんじゃないかって胸騒ぎがしてたんだよ。何となくだけれど、もしかしてお前は以前から結麻を知っていたんじゃないのか?」


 意外な質問に俺は目を見開き、動揺を隠せなかった。でも、いつか隼人には正直に話そうと決心していたから、動揺しながらも言葉を紡いだ。


「あっ、あぁ……。俺、実は十三歳の時に結麻を見たことがあるんだ。その時に一目惚れして……俺もずっと結麻が好きだった」


「マジかよ! だからお前ずっと誰とも付き合わなかったんだな。今まで俺達に云わなかったのは、それだけ真剣だったってことだろ? それなら結麻を幸せにしろよ。悔しいけど俺はお前に負けたのか……。でも云っとくが、俺だって簡単には諦められないからな」


 隼人はそう云って複雑な笑顔を見せた。
 それは俺だって解っている。隼人がどれだけ真剣に結麻のことを好きか知っているのだから。