カラオケBOXから出ると、河川敷に行くことになった。

 俺は十三歳の時、初めて結麻を見たあの日を思い出す――。

 川の近くにあるベンチに腰掛けると、結麻が近すぎて倒れそうになるくらい緊張してしまう。今までの気持ちが溢れ、「好きだ」と一言云いたい衝動を抑えながら、精一杯の言葉を何とか伝えることに成功した。

 その時、何故か結麻も同じ気持ちだということが伝わってきたような気がして、俺は自然と結麻に唇を重ねた。俺にとって初めてのキスだったから、上手く出来たかどうかなんて分からない。でも好きだという気持ちは伝えられたと思う。天にも昇る気持ちとは、こういう時のことを云うのではないだろうか、夢の中にいるような、ふわふわとした幸せな気分。時間が止まればいいのにと心底願った。


 朝日が昇るまで、俺と結麻は一緒にいたのだけれど、輝く朝日に照らされた川と俺達。幸せ過ぎて込み上げてくるものがあり、俺はそっと目に溜まった涙を隠した。

 帰り際、俺は初めて逢った日からずっと好きだったと伝えたけれど、十三歳の時からとは恥ずかしくてどうしても云えなかった。おそらくこの先もずっと云えないだろう。それを知ったら結麻はどう思うのか、嫌われるのではないか? という不安も少なからずあるのだから。