「あの…ね…っ…クッ…私が…あのときの女の子…な、の…ふぅっ…」
私は俯いているから、辰志の顔が見えない。
「だろうな…」
辰志が核心を持っていたかのように呟いた。
「へ…?な、なんで?」
見上げると、辰志の口元は弧を描いていて、
「あ?…だって昴は、あの女の子にそっくりだったからよ」
私の目を見て、優しく笑った。
正直に話してくれた辰志に、私も本当のことを言おう。
「辰志…ごめんね。正直言って、最初から辰志があのときの男の子だって知ってた…」
辰志は目を見開き、
「マジかよ…」
ため息を吐いた。
「私ね?あのときの男の子…辰志の言葉が忘れられなくて。そのときの私はね?桜木財閥の跡取り問題とか、世間の目とか、小さいながらに結構悩んでた」
辰志は黙って聞いてくれてる。
「すごく苦しかったけど…辰志がいたから。いつも笑顔で、私の側にいてくれたから…表には出さないで…笑顔でいた。いられた。…だからこそ、辰志の言葉に傷付いて…大人達の一言一句に悩まされて…揚句、笑えなくなった。小学校では、そんな日々が続いた。作り笑いの日々に疲れて、私は家を離れて留学したの」


