そして私の胸は、何故かキュウッと締め付けられる。

少しの沈黙の後、

「なんつうか…ごめんな?いきなりこんな話して。しかも…騒々しかったろ?」

それまでの空気を切り替えるかのように、辰志が
眉を下げてそう言った。

「ううん。全然いいですよ。楽しそうで…あっごめん…また敬語になっちゃった」

「いや、別に…板についてんだろ?敬語が」

「まぁ…ね。一応、お嬢様…だし。あはは…」

私が渇いた笑いで頷くと、辰志は少し切なげに眉を下げた。

「あのさ…俺のもうひとつの昔話、していいか?」

「え……?」

私は不思議に思ったが、すぐに頷いた。

素直に頷けたのは、私にも辰志の苦しみを軽くすることが出来ればと思ったのと、今まで辰志のことを、昔のあの日のイメージのままだと思うのは、私が間違っていたのかもと感じたからだ。