5月も終わりに近付く頃。

 俺は渚さんに付きまとわれながらも平穏に過ごしていた。


「蕪木、柏木、また明日な」

「うん」

「……」


 無言で手を振る琉愛。

 うーん…嫌いなわけではなさそうだけど、まだ慣れてないのかな。

 俺たちは哺乳類好きって共通点があるけど、山浦は違うから。


「大和、早く帰ろ」

「うん」


 鞄を持って2人でドアに向かう。

 途中で声を掛けてきた人には返す。

 一応、喋る仲にはなったからね。


「蕪木ぃぃぃぃっ!!!!
 一生のお願い、助っ人でバンド入って!!」


 いつものように来た渚さん。

 バンドとか……あれ?


「……助っ人?」

「ギタリストが手首怪我しちゃって…!
 助っ人でいいから入って!!」


 助っ人…ねぇ。

 それでも、人に合わせるのって苦手なんだけど。


「…行ってきなよ」

「…琉愛?」


 足音を立てずに歩いて行ってしまった。

 …仕方ないか。


「…助っ人でいいんでしょ」

「っ…ありがと!着いてきて!」


 着いてきてって、手首掴まれてるんですけど…。