「うん…おやすみ。
 あ!大和、課題ちゃんとやんなよ!?」

「気が向いたらなー」

「もう!」


 手を振って、ゆっくり歩き出した。

 後ろでドアが開閉する音を聞いてペースを上げる。

 俺たちの日常はこんな感じで

 とても居心地が良かった。

 その日常を壊したのは――紛れもない、俺なんだけど。







―――――







 新学期が始まって数日。

 受験を控える3年はピリピリしていた。

 たぶんいつも通りなのは俺くらいだろう。

 昼飯を食べ終わって友だちの祥次とだべる。


――向井 祥次(ムカイ ショウジ)


「ねぇ円香!表見に行こうよっ」

「あ、うんっ」

「どーせダーリンのことは知ってると思うけどねー」

「あはは…」


 そんな会話が聞こえてきた。

 円香…彼氏いたっけ??

 まぁいてもおかしくないよなぁ…。

 もう中3だし。


「大和、俺らも見に行こうぜ」

「うん」

「どーせ愛しのハニーのことはわかってるんだろ?
 …ブハッ」


 自分の発言に吹き出す祥次。