まるで背中合わせに向かい合った、互いの家のように


性格も生き方もほとんど対照的な翔とわたし。



小学校を卒業したのをきっかけに

わたしの身長は止まる一方で、翔は中学を境に背がグンと伸びていった。


人見知りな性格のわたしとは反対で

翔は得意のサッカーでたちまち注目されるようになっていった。


気がつくと翔の周りにはいつも人が集まっていて、にぎやかで。


何もしていなくても翔がそこにいるだけで

その場がパッときらめき立つ。


自然と、人を引き付ける魅力がある。


そんなクラスの中心的存在にいた翔に

関心を示す大人や、好意を寄せる女の子たちはいつの間にか増えていったんだ。


だからきっと、この高校でも翔はそんな風にして

うまく人の心をつかんで、周りとの距離を縮めていくんだと思った。


わたし一人だけを除いて。



「……っ」



その瞬間


わたしはとっさに泣きそうな思いをグッとこらえる。


…わたしはただ、普通で充分だったんだ。


“翔の幼なじみ”として、なにか特別な扱いを望んできたわけじゃない。


だけどせめて、他の人と話すみたいに


翔もわたしに対して普通に接してくれて、優しくしてくれて

そして一瞬でも…、笑いかけてくれていたなら。


きっと、こんな
理由のわからない気持ちには、ならなかったはずで…――。