“…おい見たか?さっきの翔の、ボールさばき”


“ボールが生きてるように見えたぞ”


“あいつ、将来プロになれるんじゃね?”


“サッカー部の顧問がほっとかねーだろうな”



そんなわたしの不安をよそに


翔の不自然すぎる行動に対して、
周りのクラスメートたちは疑問や引け目を感じるどころか


むしろそれが逆に
翔にとってはサマになって映っていたらしく

ますます男子生徒からの注目を浴びているみたいだった。


しまいには
翔のサッカーボールの扱いに、すっかり魅了された様子の女の子たちが


しきりに翔の方へ興味の視線を向けては、ひそひそと囁きあう声まで聞こえてくる。



“ねぇねぇ、今ボール蹴ったヒト、見た?!超カッコ良くない?”


“見たぁー超カッコイイ!”


“サッカー部だったのかな”


“名前、なんて言うんだろ?”


“あとで一緒に話しかけてみよーよ”



なんて
あちこちから聞こえてくる、翔を賞賛までするような女の子たちの会話に


まるでわたしは

ずっとしまい込んでいたはずの想いをいきなり誰かにえぐりとられ

それをすぐ目の前へと突きつけられたような

そんな気持ちになった。