「はなし……っ」
「……」
離してと言う前に口を塞がれた。
十六夜の唇。いや、神楽の唇で軽い接触をされた。
私から離れた唇が綻び、パクパクと動く。
何か言いたいんだろう、読唇術なんてマスターしてはいないが、よく見る形のそれは理解できる。
「す、き……」
「……」
頷く十六夜。
また唇を動かす。
「い、お、ひ、と……」
「……」
唇と一緒に十六夜の右手が私の左手に何かを書く。同じスピードだ、分からない私のために二重で教えているんだろう。
「い、しょ。ひと、つ……になり、たい」
一緒。一つになりたい。
「すき、だか、ら」
好きだから。
「きり、え、あい、して、わたし、を、あいして……わた、し、だ、け」
キリエ愛して。私を愛して。私だけ。


