『キリエ、大好き』
丸まった可愛い字で、書かれてあった。
紛れもなく十六夜の“筆跡”だ。神楽ならばもっとかくかくしたきれいな字を書く。
喋れないのではなく、喋らない十六夜との会話はこうなる。
『好き、好き、好き』
「うん……」
『好き、好き好き好き』
メモ帳の一ページを埋めていく愛の言葉。
おそらくはメモ帳まるごと『好き』という文字で埋め尽くさなきゃ十六夜は止まらないだろう。
「分かったから、もういいよ」
ペンを持つ右手にさわりと触れる。二ページ目に移行とした状態でぴたりと止まった十六夜。
そっかぁ、と言いたげな笑みを浮かべて。
『キリエの絵書いた、見て』
いきなり彼女はデスクトップまで移動した。
繋がる私は前屈状態に。あがる左手をいっぱいまで伸ばし、彼女がやることを見た。


