事の発端たる決定的なこと。
それを持つ神楽や十六夜は余計にそばにいたいとなるけど。
「十六夜……」
「……」
唇を舐められた。
びっくりして、指で唇に触れればクスクスと声があったらそんな感じで笑う彼女がいた。
十六夜は喜んでいるかもしれないが、こちらは複雑だ。
十六夜は私を好きでいる。
男嫌いだから女性に――同姓愛者たる十六夜は優しく接した私に目を置いてしまった。
恋ではなく、一時の迷いだ。優しい者がそこにいるならば、私でなくとも十六夜は恋をしていただろう。
一途らしい十六夜はもう私以外に興味ないそうだが――私は十六夜に恋をしていない。
あくまでも私が愛するのは神楽だ。
十六夜でもないし、ましてや深でもない。
姿が同じでも“神楽と呼べない人”に迫られるのは拒否したい。


