母親は動じない。
慣れたんだろう、私が“こうなること”に。
目玉焼きが焼ける音。半熟を目指すお母さんは水を入れて蓋をしていた。
蓋で埋もれる音に。
「どうしたの」
優しい音。
「また調子悪いの、小野先生のところ一緒行こうか」
「……、うん」
「薬は、飲んだの?飲めば気分大丈夫だって言ってたでしょう」
「まだ」
「食事したら飲みなさい。病院始まるの九時からだから、それまで我慢できる?」
「うん。……ごめん、甘えて」
「なあに、今更。きーちゃんは気持ちが繊細なだけなんだから。お母さんみたく図太くなりなさい、甘えて悪いだなんて思わなくていいから」
「ありがとう」
「はいはい。ほら、出来たから食べるよ」


