持っていってとは、リビングへということ。
茶碗を自分用とお母さん用のを出して。
「父さん、まだ出張だよね」
「二人分だけでいーよー」
らしく、箸も私とお母さんのだけ用意する。
「ジャガイモの味噌いためあるんだけど食べるー?」
キッチンからは大声で言われた。食べると言ったけど聞こえなかったらしく、二度言う羽目になった。
キッチンに戻ったら戻ったで、食べるんなら自分でチンしなさいと言われたし。
「おかず足りないときは冷蔵庫のものを勝手に食べなさい」
「ううん、足りる」
「そ、じゃあお母さんはタラコを食べるから持っていって」
「分かった」
そんなやり取り、日常だ。
でも――日常でも、“今”はいけない。
母親が二つ目の目玉焼きを焼いているときに、その背中に額を当てる。


