瞳孔が開き、鼓動が止まった。
頭を撫でる手と、聞いているだけで眠れてしまうような声。
悲しみを含み、泣かないでと声の裏にその感情を含ませて。
「錐恵がいるだけで、十分に幸せなんだ」
彼が言う“幸せ”が力強く抱きしめられる。
開いたままの瞳孔を閉じて、彼の胸板に顔をうずくめた。
夢心地だ、でも現実に違いない。
「錐恵がいるから俺は笑っていられる。錐恵が笑うから俺は幸せで。錐恵が幸せなら、俺はそれだけでいい」
気持ちがよい現実。
苦しくて、泣きたくなることばかりで、都合いいことなんかない中である――今この瞬間の。
「ずっとそばにいてくれ。ずっとそばにいよう。いるから、離れない。なにがあっても、どんなことがあっても……錐恵を泣かせてしまうことがあっても……、俺は、君なしではもう生き長らえる喜びを味わえない……!」


