(一) その日、私はバイトを休んだ。 電話があったのだ。 『ごめん、何か会いたくなって。本当にごめん』 俯き加減な声。 こんな声を出すとき、彼は決まって“落ちている”。 バイト終わったあとでもいいけど、愛する彼が落ちているならば救ってあげたいという思いが真っ先に出た。 結果、私は彼が住むアパートに向かう。 タクシーだ。 痛い出費になるけど、しのごの言っていられない。