拓登は、歌い始めた。 小さな声で、 そっと。 耳元で。 優しい子守歌。 私の体が溶けて、拓登と一緒になればいいのに。 このまま、ひとつになれればいいのに。 「お前の悲しみを吸い取ってやれればいいのに」 彼氏でも家族でもない人がこんなことを言ってくれる。 私みたいなバカ女の為に。 「鈴音の寂しさを、俺の寂しさで消してやる」 拓登、あんたは何が寂しいの? 拓登の心にはどんな傷があるの? 覗いてみたいのに、怖くて覗けない秘密の小箱のようだった。