「大人って汚いね」


綾は、静かにそう言った。



「うん。こんなに簡単に引っかかるなんて。バカだね」



引っかかるなよ。


大人のくせに。



こんなバカな高校生の計画に引っかかるなよ。



情けないよ。







「あ、おっさん今から来るって」



綾は一瞬、すごく嬉しそうな顔をした。



「詳しく聞こうよ」


「いいや、私は」




お父さんと綾のお母さんが本当にホテルに行ったとしたら、どうやってそうなったんだろう。


気にならないわけじゃない。




でも、聞くのが怖かった。




聞いてしまうと全てが現実になってしまいそうで。


今はまだ半分夢の中の話のような気がしていた。





「綾、おっさんと今からデートしてきたら?」


「でも、鈴音は?」


「行く所あるから」


「あ~、もしかして彼氏できたとか?」


「そういうんじゃないけどさ。また話すよ」





まだ星の出ていない時間。



拓登がいるはずもない。





でも、私は向かう。



私の居場所へ・・・・・・